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2017年2月 2日 (木)

冬のエステラ・カルテット


エステラ・カルテットの響きへ。

ドヴォルザークのノクターンから始まる。これは後述するドヴォルザーク弦楽五重奏曲第2番とも関連があり、その曲に組み込まれていたノクターンすなわちノットゥルノであり、後に「弦楽合奏のためのノットゥルノ ロ長調」として独立した曲になったものである。温かみのある合奏の中からドヴォルザークらしい独特のメロディセンスの粒が光り輝いていた。

続く、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第4番ハ短調へ。この曲については楽理的にも、ベートーヴェンの作曲史における意義深い作品として着目されることが多い。諸説ある中、例えば、第1楽章はピアノソナタ第8番「悲愴」を、第2楽章は交響曲第1番第2楽章と弦楽四重奏曲第7番「ラズモフスキー第1番」を、第3楽章は交響曲第8番を、第4楽章はモーツァルトが交響曲第41番で用いた音型(ジュピター音型)を連想するとして、その比較論的分析の幅が広がりを見せている。ともあれ、ベートーヴェンにとっての企てが多分に含まれており、エステラ・カルテットでの演奏においても、その奥深い音楽表現を感じることができた。第1楽章におけるベートーヴェンらしい抗い方を力強く再現する響きがこだましていた。前へと押し切ろうとする躍動感がこの曲の神髄であることに考えを及ぼす時、彼らカルテットは秀逸なる演奏でベートーヴェンの声に呼応したのであり、それを耳にした私にとっても貴重な機会となった。

そして、ドヴォルザークの弦楽五重奏曲第2番ト長調へと歩を進めよう。この曲は2つのヴァイオリンと、ヴィオラ、チェロ、コントラバスのために作曲された類例の少ない編成であり、今回はカルテットに加えてコントラバスの客演が参加した。先述のように、当初の5楽章作品から《弦楽合奏のためのノットゥルノ ロ長調》が新たなる作品として改められ、4楽章作品として完成された経緯がある。ベートーヴェンからドヴォルザークへの室内楽の歴史伝達に想いを馳せる時、その狭間に存在するのがブラームスである。ブラームスは相対する派を標榜するワーグナーやロシアのチャイコフスキーといった同時代の作曲家に比べ、自身の後継者たる子弟としてドヴォルザークを高く評価しており、彼が世に出るための手助けや導きをしている。そのように位置付けた主な動機は彼の旋律美にあったと言われている。まさに、この弦楽五重奏曲もその性格を強く帯びている。各楽章ともに特有の美しい旋律が織り込まれている。今回の演奏では、その端正で緻密な表現技法を丹念に再現し、重厚かつ明るみを含む響きを奏でるのであった。あたかも冬の日の夕暮れに穏やかな音の空間を設えたように。ドヴォルザークの東欧的とも称される音色の混ざり合いを、五重奏の修練された技巧によって表現し、この音楽の新たな側面を醸し出しているように思えた。

とっておきの温かな鍋料理を堪能することができた。




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